アルテ・ピナコテーク
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アルテ・ピナコテーク(Alte Pinakothek,旧絵画館)はドイツの国立美術館である。バイエルン州ミュンヘンに位置する、世界でも最古の部類に属する公共美術館である。もとはバイエルン王家ヴィッテルスバッハ家の収蔵品を市民を対象に展示する目的で作られた。以後、バイエルン王国のドイツ帝国への編入を経て、国有化され、現在にいたる。「ピナコテーク」という単語はギリシア語に由来しており、「絵画の収蔵所」という意味を持つ。
12世紀からバイエルンを統治してきたヴィッテルスバッハ家の美術コレクションの形成は、16世紀前半にさかのぼる。1527年~1528年頃、当時のバイエルン大公ヴィルヘルム4世は、アルトドルファーらの著名な画家にミュンヘンのレジデンツ(王宮)のために歴史画の制作を注文した。この時制作されたアルトドルファーの『アレクサンドロス大王の戦い』はアルテ・ピナコテークの代表的収蔵品の1つとなっている。以後、歴代の君主の収集を加え、ヴィッテルスバッハ家のコレクションはヨーロッパでも有数のものとなった。19世紀に至り、ルートヴィヒ1世(在位1825年-1848年)は、イタリア絵画などの優品を数多く入手して、コレクションの幅を広げ、これらを収蔵展示する新たな建物の設置を計画した。彼は建築家レオ・フォン・クレンツェ(1784-1864)に設計を命じ、1826年に起工、1836年に絵画館が開館した。館名に「アルテ」(「古」)を付すのはノイエ・ピナコテーク(新絵画館)の開館後であることは言うまでもない。建物は第二次大戦で被害を受けたが、戦後に復興し、1957年に再開している。
当館はノイエ・ピナコテークおよびピナコテーク・デア・モデルネに隣接し、二館とともにドイツ国立バイエルンコレクションを陳列する。当館は中世からバロック期にかけての作品を陳列の中心にし、ホルバイン、クラーナハ、デューラーなどのドイツ絵画のほか、ルーベンス、ブリューゲルらを始めとするフランドルやネーデルラントの絵画、さらにはフランス、スペイン、イタリア絵画にも多くの優品があることで知られる。
[編集] おもな収蔵品
- 聖ヴェロニカの画家『聖顔布を持つ聖女ヴェロニカ』(1420年頃)
- シュテファン・ロッホナー『キリスト降誕』(1445年)
- デューラー『四聖人』(1526年)
- デューラー『自画像』(1500年)
- アルトドルファー『アレクサンドロス大王の戦い』(1529年)
- ブリューゲル『怠け者の天国』(1566年)
- ロヒール・ファン・デル・ウェイデン『東方三博士の礼拝』(1455年頃)
- ハンス・メムリンク『聖母の7つの喜び』(1480年)
- ルーベンス『エレーヌ・フールマン像』(1630-1631年頃)
- ルーベンス『アマゾンの戦い』(1619年以前)
- レンブラント『自画像』(1629年)
- フランソワ・ブーシェ『ポンパドゥール夫人像』(1756年)