アルジャジーラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アルジャジーラ(الجزيرة 、原音をより正確に表記するとアル=ジャズィーラ)は、アラビア語と英語でニュースを24時間放送している衛星テレビ局。本社はカタール・ドーハにある。
目次 |
[編集] 名称の由来
ジャジーラはアラビア語で「島」および「半島」を意味する。アルは定冠詞(the)にあたる単語である為、アル・ジャジーラは「その島」という意味になり、つまりアラビア半島のことを意味する。
ロゴデザインはジャーワーニー体(アラビア書道における書体のひとつで、日本の書道における草書にあたる)で雫状に「アルジャジーラ」と書かれている。
なお、サウジアラビアの新聞など、中東諸国にはこれ以外にも「アルジャジーラ」の名をもつ報道機関が存在するが、それらとの直接的な関係はなく、まったく別の組織である。
[編集] 沿革
- 1996年カタール首長より1億5000万USドルの支援を受けて設立。放送機材はソニーが全て請け負った。2001年までに広告収入などによる独立採算を目指していたが、完全には達成できず、ワシントンタイムズ紙によると、2004年時点でも年間3000万ドルの支援を受けているという。また、イギリス人ジャーナリスト ヒュー・マイルズ著「アルジャジーラ 報道の戦争」によると収益の多くを日本のNHKを中心とした海外メディアからの「映像使用料」が占め、特にNHKが払う金額が一番大きく、同局の大きな助けとなっている。また同著によると同じニュース専門局CNNと比較してCMの放送時間が異様に少ないという。
- 2001年アメリカのアフガニスタン侵攻の報道においてアルジャジーラの名が広く知られる。アルカーイダから送付された、オサマ・ビンラディン容疑者のメッセージの映像を独占放映したり、アフガニスタン国内から戦争実況を中継したりなどの報道活動により一躍注目を集め、「中東のCNN」と形容された。
- 2001年11月日本のSKY PerfecTV!でも一部日本語同時翻訳付きで無料放送されていた(SKYサービス 202ch)が、試験放送のまま1年後の2002年9月に放送終了した。尚、現在はNHK-BSが世界のニュースのひとつとして枠を設けて日本語同時翻訳放送を行っている。
- 2003年イラク戦争では、イラク市民の戦争被害やアメリカ兵の遺体映像などを流すなど、欧米メディアとは異なる視点のニュースを伝える姿勢は中東、ムスリム社会に於いて存在価値をますます高めている。この戦争では、米軍のミサイル攻撃により特派員1名が死亡している。
- 2004年2月日本に東京支局が設立された。アジアでは北京支局に続いて2局目となる。情報の素早さと正確さに対して好評で、日本で起きた新潟県中越地震では海外メディアの中で一番早く第一報を世界中に発信するなど、世界情勢を知る上では重要なメディアとなっている。
- 2006年11月1日、開局10周年を迎え、これまでの局の足跡を辿る番組のほか、子供と大人が討論する番組など、様々な特別記念番組を放送。また、これまでに殉職したスタッフに対して社員一同による黙祷を行った。この他、開局10周年にちなみ、多くの新しい企画が開始された。
[編集] 特徴
従来からの欧米中心の視点とは異なるアラブ系メディアであり、アメリカのテレビがアメリカ社会に偏向しているのと同様、アルジャジーラも当然イスラム社会に偏向しているが、これが直ちにアルジャジーラが反米メディアである事を意味しない。 カタールは、欧米諸国に対しては、イラク戦争では基地を提供する程度には比較的に穏健な姿勢であり、このアルジャジーラはカタール政府が西洋の近代的メディアを手本に創設した、発展途上国の報道としては、比較的自由な報道機関である。また、パレスチナ自治政府の汚職などの問題を追及したり、イスラエル人が出演してヘブライ語で話すなど、他のアラブのメディアがやらなかったような事も積極的に取り上げる。
アルジャジーラは、公正で政治的圧力を受けない、中東で唯一の報道機関であると自称している。実際に英国のIndex on Censorship(検閲に関する問題を扱う雑誌。1972年創刊)では、2005年に「アラブ諸国における自由な情報交換を促進し、検閲を拒否する勇気」の一例として紹介されているし、アメリカにおいても1999年のニューヨークタイムズ紙に「アラブ諸国で、最も自由で最も広い観点を持つテレビネットワーク」と評されている。
一方、2001年9月11日以降の対テロ戦争を国策に掲げる際の米国などにおいては、ビンラディンからのテロを正当化するメッセージをそのまま放送したことから、敵対勢力(テロ組織)の主張を発信し、宣伝しているとして問題視された。アルジャジーラ側はあらゆる観点を取り上げているだけだと反論したが、これによって、アルジャジーラとタイアップしていたCNNなどのいくつかの報道機関に政治的圧力が加えられ、その放送割り当て時間が削減された。更には2005年11月22日付の英大衆紙デイリー・ミラーによると、アメリカのブッシュ大統領が、イラク戦争のファルージャ攻撃において、ドーハのアルジャジーラ本部にも空爆を意図していた、としている。これに伴い、アルジャジーラはスタッフやキャスト、あるいはその家族を揃えての批判キャンペーンを行った。
また、イラク戦争中に米兵の遺体を放映したことでアメリカ証券取引場への立ち入りを禁止されたほか、最近ではチェニジアの反体制運動家へのインタビューが原因で、在カタールのチェニジア大使館員が全員引き上げるなど報道内容が政治問題化してしまう事もしばしばある。
アルジャジーラのテレビ番組は報道だけではなく、時には出席者すべてが途中退席してしまうほど白熱する討論番組「反対意見」、聖職者がイスラムの教えにのっとり、法から性生活まで忌憚ない意見を述べる宗教番組「宗教と生活」も高い評価を受けている。また、全世界に情報を発信するアルジャジーラ・インターナショナルをはじめ、常に検閲の無い生放送を提供するアルジャジーラ・ライブ、数少ないアラビア語のスポーツチャンネルであるアルジャジーラ・スポーツ、子供向けのアルジャジーラ・チルドレン・チャンネル、ウルドゥ語のアルジャジーラ・ウルドゥといった多くの放送チャンネルも抱えている。
また、同局の成功を見本として、ベネズエラ政府の主導のもと、キューバやアルゼンチンなどの政府が参加して同国の首都カラカスに2005年7月24日に設立されたTeleSURがある。
[編集] 日本での視聴方法
アラビア語放送に関しては、こちら で視聴可能。また、英語放送に関しては、こちらで視聴可能(どちらも有料)。 また、livedoor ニュースが英語電子版を日本語に翻訳した記事を掲載している。
[編集] 外部リンク
- アルジャジーラネット - 公式ウェブサイト(アラビア語)
- アルジャジーラ・イングリッシュ - 公式ウェブサイト(英語)
- livedoor ニュース: アルジャジーラ(日本語)
- アルジャジーラトーク! - ニュースブログ(アラビア語)