アラック
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アラック、あるいはアラクは、中近東、特にイラク、シリアを中心とし、エジプトやスーダンのような北アフリカ地方などでも伝統的につくられてきた蒸留酒。
アラック(アラビア語: عرق、‘araq)の名称はアラビア語起源である。アラビア語のようなセム語派の言語には子音部分が語根となり、母音部分が入れ替わることで意味の派生が起きる特徴がある。 ‘araq の語根 ‘-r- q には「少量の水」の意味があり、ここから派生した「酒に水を少々混ぜる」を意味する動詞が ‘arraqa または ra‘arraqa で、アラックの名称はここに由来する。トルコ語ではアラックから派生したラクの名で呼び、ギリシャ語では同系統の蒸留酒をウーゾまたはウゾーと称す。英語では arrack 、 arak 、スペイン語では arac 、 erraca 、ポルトガル語では araca araque 、 orraca 、 rac と綴る。日本には既に江戸時代に長崎経由で輸入されており、阿剌吉、阿剌基と書いて「あらき」と呼んだ。
もともとはナツメヤシやブドウといった中近東乾燥地帯原産の糖度の高い果実を醗酵させてから蒸留した酒であるが、イスラム文化の拡大とともに中近東の蒸留技術が各地に伝播し、その土地の伝統的な様々な醸造酒を蒸留してローカル色豊かなアラックがつくられるようになった。例えばインドやマレーシアなどでは、米から作られた醸造酒や、ヤシの花穂を切断して採取した樹液を醗酵させたヤシ酒を蒸留して、アラックをつくる。ヨーロッパにも伝えられ、フランス王家のブルボン家では、サトウキビを原料としたアラックをつくっていた。アラック、あるいはアラック系統の蒸留酒の中には、ニガヨモギなどのハーブ類を醸造時、あるいは蒸留時などに加えて香りをつけるものもある。
アルコール濃度は、加糖してある低品質のものでは10%以下、高品質の濃いものになると60%近くにもなる。
アルコール度の高いものは氷を入れずに水で割って飲まれる。アラックそのものは無色透明だが、水で割ると非水溶成分が析出するために白濁するため、「獅子の乳」の別名がある。
あまり水を加えすぎて重たく白濁すると、いっしょに飲んでいる相手が縁起をかついで敬遠する、という習慣を持つ地方もある。