のび太の創世日記
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『のび太の創世日記』(のびたのそうせいにっき)は、1995年3月4日に公開された「大長編ドラえもん」シリーズの映画。
原作は藤子・F・不二雄、監督は芝山努。配給収入12億8000万円、観客動員数260万人。
同時上映は『2112年 ドラえもん誕生』。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 舞台
のび太がドラえもんの秘密道具「創世セット」で作り出した、もうひとつの地球。現在の地球に良く似た地形で、よく似た歴史を辿っている。地上では人類が文明を築いているが、実は内部は空洞で昆虫人による文明が築かれている。本物の地球より少しだけ小さいためか、30年に1度ほどの割合で異常気象に見舞われている。
[編集] ゲストキャラ
いずれも、のび太が作った新しい地球の住人。
- ノンビ(声優:林原めぐみ)
- ノビ彦(声優:林原めぐみ)
- 神話時代ののび太そっくりの兵士。スネ夫似のスネ若隊長に命じられ、神への生贄となったジャイアン似の少女・ジャイ女を見張る。
- ヒメミコ(声優:巴菁子)
- 神話時代、村を支配している老婆の巫女。白神様へ少女を生贄にせよとの神の御告げを申し渡す。モデルは卑弥呼と思われる。
- 野比奈(声優:辻村真人)
- ノビ彦の子孫で、平安時代頃の薬草売りの老人。スネ夫似の都一の薬師・スネ麻呂に仕える。貧しいが優しい心を持つ。
- チュン子(声優:こおろぎさとみ)
- 昆虫人の少女。怪我をしたところを野比奈に助けられ、そのお礼に財宝を授ける。後に、未来でチュン子をモデルとしたと思われる像が2体置かれる。
- 実在の人物。侍たちの大将。紅葉狩りの際に迷子になったスネ麻呂の娘の捜索と山に住む鬼の退治の為山狩りを決行する。原作と映画では容姿が全く異なる。
- 野美 野美秀(声優:井上和彦)
- 野比奈の子孫で、野比奈が遺した富をもとに築かれた野美コンツェルンの社長。出木松博士を資金援助し、南極の大洞窟への探検に挑む。
- 出木松博士(声優:速水奨)
- 出木杉に似た科学者。気球で南極点通過を成し遂げて南極点の大穴を発見した後、野美秀と共に南極探検に挑む。
- 源 しず代(声優:玉川紗己子)
- 静香に似た野美秀の秘書。一流の登山家でもあり、野美秀たちの探検に同行する。
- 昆虫人
- 新地球の地底空洞に文明を築き上げた昆虫人類たち。学名は『ホモハチビルス』。姿は蜂に似ているが、人間たちとコンタクトを取る際は人間そっくりに変身できる。彼らの文明は人類を遥かに上回っている。ハチから進化した昆虫人が主流派だが他にもカマキリやクワガタムシに似た昆虫人もいる。なお、彼らの世界では植物が育たないらしく、巨大なキノコなどが生えている。
- 大統領(声優:村松康雄)
- 昆虫人の大統領。探検にやってきた野美秀と会見し、地上進出を宣言する。
- ビタノ(声優:林原めぐみ)
- 昆虫人の大学生で、大統領の息子。古生物学の卒業論文で、地球誕生の経緯の研究をしている。変身した姿はのび太そっくり。
- エモドラン(声優:山田恭子)
- 未来からやって来てビタノの面倒を見ているロボット。ドラえもんに似ているが、体は緑色で、鼻やヒゲがなく、背中に昆虫のような翅が生えている。
- 昆虫人の兵士(声優:大塚明夫)
冒頭で現れた偵察部隊の一人。姿はハチのようである。「あれはなんだッ!」のセリフとともに現れた。目的は不明。ただ破壊活動ではないようである。映画のなかで唯一、ジャイアンたちからやられてないキャラである。(大半はジャイアンに返り討ちにされるが) これといって重要な役割はない。
[編集] 物語のあらすじ
夏休みの自由研究に行き詰まっていたのび太たちは、ドラえもんの秘密道具「創世セット」で新たな宇宙を作り、地球型惑星の歴史を観察することになった。新地球に誕生した人類の中には、のび太によく似た人間もいた。のび太は自分に似た人間たちについ肩入れし、その世界の神様となって彼らに力を貸してゆく。そして現代に近い時代、(野美秀のセリフから国際連盟が発足した1920年から日本が、国際連盟を脱退する1933年までと思われる)のび太に似た野美秀は、南極の大洞窟探検に出発する。そして彼らが目にしたものは、なんと地球の中の空洞に広がる、昆虫人による大文明だった。実は、新地球では昆虫が進化するはずが、のび太が意図的に人類を進化させたため、昆虫は地底に隠れ住んでいたのだ。昆虫人たちは地上へ進出し、地上世界を取り戻そうとしていた。このままでは地上は戦火に覆われてしまう。果たして、新世界の運命の行方は……?
[編集] スタッフ
- 監督:芝山努
- 脚本:藤子・F・不二雄
- 演出:塚田庄英、平井峰太郎
- 作画監督:富永貞義
- 美術設定:沼井信朗
- 美術レイアウト:川本征平
- 美術監督:森元茂
- 色彩設計:松谷早苗
- 撮影監督:高橋秀子
- 特殊撮影:渡辺由利夫
- 編集:岡安肇
- 録音監督:浦上靖夫
- 効果:柏原満
- 音楽:菊池俊輔
- 監修:楠部大吉郎
- 制作デスク:市川芳彦、大澤正享
- プロデューサー:別紙壮一、山田俊秀、小泉美明、木村純一
- 制作協力:藤子プロ、ASATSU
- 制作:シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
[編集] 概要
本作はコロコロ掲載時大長編シリーズ15作記念作品としても掲載されていた(映画としては16作目)。シリーズで初めて海援隊が主題歌を担当している(ソロ武田鉄矢は何度かあった)。今作も今まで通り武田が作詞を担当している。
大長編ではあるが、ストーリー中盤の構成が創世された世界での幾つかの歴史のエピソードに、のび太たちが関わっていく形式となっているのが特徴。 小エピソードの重ね合わせによる展開という点は他の大長編と何ら変わるところはないが、舞台や登場人物がめまぐるしく入れ替わるため、冒険要素や、本作品においても分りやすい対決構造がなく、子供向けという観点から見て娯楽性に欠けやや不親切なつくりともいえる。 ドラえもんの大長編は必ずしも悪党との対決という展開を示すわけではないものが多く、勧善懲悪ではく、物語の流れの中でさりげなく子供たちに社会的なテーマを提示するからこその有形無形の教育的効果もあるといえる。 エンタテインメントの方向としては、特に、博物誌的な読み方を要求する上、他の大長編作品に比べ、のび太たちに接写することで生まれるスリルやサスペンス、感動といった娯楽要素が乏しかった点はあり、こういった描写のさりげなさに込められた精神、巧さにおいても藤子・F・不二雄は抜群の面を持っていただけに勿体無くもあった。ただ、宗教・考古学・歴史などの大河ロマンの要素を踏まえている上、これまでの作品において見られた「異人類との共存」をさらに発展させた結末を迎えるなど、そのスケールの壮大さに魅力を感じるファンもいる。
藤子・F・不二雄SF短篇集にある「創世日記」を原案とした作品と見られる。
この作品からタイムマシンで移動する時の超空間バックがCG仕様のものに変更されている(同時上映の2112年ドラえもん誕生では2代目が使用されている)。 本作は同日公開の95年東映アニメフェアが公開され、当時大人気だったSLAMDUNK、ドラゴンボールZ、ママレード・ボーイの三本柱と激しい競争を繰り広げた。(余談だがSLAMDUNKは当作と同じテレビ朝日で、ママレード・ボーイはテレビ朝日の系列局であるABCで放送された他、ママレード・ボーイは当作と広告代理店が同じである。ということは同じチャンネルの番組同士が映画で争っているということになる。また、音楽スタッフは劇場版ドラゴンボールZと同じでドラゴンボールZも15作記念作品である。ドラえもんと95年東映アニメフェアの作品は共通点は無いとは言い難いほど沢山ある。)
[編集] 主題歌
「さよならにさよなら」(作詞:武田鉄矢/作曲:千葉和臣/編曲:藤原いくろう/唄:海援隊)