のび太のパラレル西遊記
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『のび太のパラレル西遊記』(のびたのぱられるさいゆうき)は、1988年3月12日に公開されたドラえもんのドラえもん映画作品。タイトル通り西遊記をモチーフとしている。
原作は藤子・F・不二雄。但し体調不良のため、存命時のドラえもん映画作品の中で唯一、原作漫画が描かれていない。このため、次作『のび太の日本誕生』以降は、映画と原作本で番号が1つずつずれる。
監督は芝山努。脚本はもとひら了。配給収入13億6000万円、観客動員数280万人。
同時上映は『エスパー魔美・星空のダンシングドール』『ウルトラB・ブラックホールからの独裁者B・B!!』
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 物語の舞台
[編集] ゲストキャラ
- 今回から、タイムマシンに音声制御装置が付き、ナビゲーションの役割をするが、制約にうるさくドラえもんに制御ボタンを押されることもある。
- 実在する唐の時代の仏教僧。経典を手に入れるため天竺への旅をしている。
- リンレイ(声優:水谷優子)
- 牛魔王(声優:柴田秀勝)
- 火焔山に棲む妖怪たちの王。
- 羅刹女(声優:栗葉子)
- 牛魔王の妻。
- 金角(声優:石森達幸)
- 牛魔王の子分。相手を吸い込む瓢箪を持つ。
- 銀角(声優:加藤精三)
- 牛魔王の子分。金角の弟。
- モトヒラくん(声優:難波圭一)
- のび太たちのクラスメート。クラスの演劇の脚本と演出を担当している。モデルは、この作品の脚本を担当したもとひら了。
[編集] 物語のあらすじ
新入生歓迎会に際し、クラスで「西遊記」の劇をやることになったのび太。本当は孫悟空をやりたかったが、のび太の役は「村人その1」。セリフも「助けてくんろー」の1言だけ。孫悟空の存在を信じるのび太は、「本物に似ている人が孫悟空になるべきだ。」と主張し、タイムマシンで7世紀のシルクロードへ向かう。そこでのび太そっくりの本物の孫悟空を目撃するが、誰も目撃談を信じない。仲間たちを連れ、再び唐へやって来たのび太だったが既に孫悟空はいない。仕方なくドラえもんの道具「ヒーローマシン」でのび太自ら孫悟空に成りすましたものの、結局ばれてしまった。
落胆して現代に帰ったところ、なんと現代世界は妖怪がはびこる恐怖の世界と化していた。唐の時代でヒーローマシンを使った際、マシンから妖怪たちが飛び出し、現実世界を荒らし回ったのだ。変わってしまった歴史を元に戻すには、唐の時代へ戻って妖怪たちを倒すしかない。本物の三蔵法師一行には、じわじわと妖怪たちの手が忍び寄る。5人は妖怪退治のため、ヒーローマシンで悟空や猪八戒に変身し、再び唐の時代へ向かう。
[編集] 豆知識
- 三蔵法師のキャラクターデザインは、藤子・F・不二雄作品「T・Pぼん」の中の「白竜のほえる山」に登場する三蔵法師に基づいている。
- 原作漫画の無い代わりとして、アニメ画のコミック(上下巻・表紙絵は藤子自身による)が初めて発売され、好評だったため以後の作品(以前の作品も後に発売)もアニメ画のコミックが発売されている。
- ドラえもん映画作品で唯一、のび太たちの町が悪に支配されてしまった作品である(『のび太と鉄人兵団』の東京大破壊は鏡面世界の出来事であるため、のび太の町には影響を及ぼしていない)。
- 理由は不明だが、この作品では大山版ドラ映画の中では、のび太、スネ夫、ジャイアンの黒目の表現が「●」ではなく「○」が一番多い。
[編集] 評価
- ドラえもんの「危険が危ない」など不自然な台詞(重複語を用いたギャグである。この台詞はドラファンの間でも有名)のある箇所が見受けられるが、純粋に冒険ものとして見れば充分な出来であり、タイムマシンを使った時間的なつながり(ただし、『のび太と鉄人兵団』と並び、歴史改変という時間論的矛盾はあるが)、三蔵法師の深い考え、しずかちゃんとのび太の夜空の語り合いなど見所は多く、脚本が藤子先生でない割に完成度はなかなかに高いが、一部ではドラ映画とは認めないファンも居るようで評価は様々だ。EDでみんなが元に戻った親に抱きつく描写、及び主題歌の「君がいるから」は非常に評価が高い。ただし、ラストでいきなりドラミちゃんが助けに来るのは唐突過ぎるとの意見もある。タイムマシンで昔の中国にきたのび太がすでに孫悟空になり活躍していた後ののび太にあったシーンは魔界大冒険の石になったのび太とドラえもんのシーンと同じく非常に評価が高い。
- 特に、タイムマシンに音声制御装置が付き『海底鬼岩城』の「水中バギー」、『宇宙小戦争』の「ロコロコ」、『鉄人兵団』の「ミクロス」と同く三ツ矢雄二が声を担当する。シャイでよく暴走する「水中バギー」とは違い性能が良いのかしっかりとした性格をしており今後の作品でも活躍している。しかし、やはり安物なのか、前に行った時間を覚えていなかったり大まかな歴史のデータなどが入っていなかったりするために途中でドラえもんにスイッチを切られてしまう場面もある。
[編集] 主題歌
「君がいるから」(作詞:武田鉄矢/作曲:山木康世/編曲:都留教博/唄:堀江美都子、こおろぎ'73)
[編集] スタッフ
- 監督:芝山努
- 脚本:もとひら了
- 演出助手:平井峰太郎
- レイアウト:本多敏行
- 作画監督:富永貞義
- 作画監督補佐:大塚正実
- 原画
- 池ノ谷安夫、飯山嘉昌、大塚正実、斉藤文康、伊藤治美、窪田正史、村山純一、原田浩、木村陽子、鹿取真三子、若松孝思、渡辺歩、須田裕美子、神村幸子、重国勇二、杉野左秩子、飯口悦子、伊藤一男、若山佳治、山本勝也、森島格、西岡哲夫、唐瑞亨、徳田益男、徳田幸子
- 美術設定:工藤剛一
- 美術監督:高野正道
- 録音監督:浦上靖夫、大熊昭
- 効果:柏原満
- 音楽:菊池俊輔
- 撮影監督:熊谷正弘
- 特殊撮影:原慎吾
- 編集:井上和夫、渡瀬祐子(井上編集室)
- 監修:楠部大吉郎
- 制作デスク:市川芳彦
- 制作担当:山田俊秀
- プロデューサー:別紙壮一、小泉美明、波多野正美
- 制作協力:藤子スタジオ、旭通信社
- 制作:シンエイ動画、小学館、テレビ朝日